昭和将軍史/りっと(里都 潤弥)
 
 日記帳に落とした柿の種挟み僕は昔を思い出します

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昭和51年の春に生まれた息子を父が将軍と呼ぶ

将軍閣下御年2歳牛乳を飲まないわりにグラタンが好き

父親は軽く思想を傾けて息子の絵本糊付けをする

初恋の女の子の服の袖で鼻拭く将軍閣下4歳

父親は軽く家計も傾けて息子に鉄の鎧を着せる

空色のランドセル背負う将軍閣下嫌いなセミがぴたりと止まる

お母さんは細胞分裂の結果ばあやになったと嘘をつく父

コンビニでソプラノリコーダーを吹く閣下8歳のさよならライブ

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 ふと見れば父の背中は生ぬるく内臓までも見えるようです
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