旧式/たもつ
 


無駄口を叩いている君の側で
僕は電卓を叩いている
端数がうまく積み上がらない
けれど僕の電卓は旧式だから
いつも君の指を叩こうとしてしまう

時計は見たこともない時計回り
僕は長針をかじり
君は短針をかじろうとする
秒針は無いので
それはそのまま
けれど時計は旧式だから
いつも僕らを時間と間違えてしまう


  野原の真ん中近くで名義の無い自転車の車輪は曲がった

  炎天下、ピアノはさぶいぼだらけのピアニカになった

  ヘビのぬいぐるみはある日唐突にお母さんと呼ばれた

  でも実は悲しいお父さんだった

  旧式に過ごされる毎日の中で

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