意識する昔/ヨルノテガム
うばかりだ
私は 真空 切り裂く 稲妻のごとき
所作のあとかたを夢想する
どちらかが倒れ、または
どちらも絶命してゆく風景
相手の顔を思い出せない
目と目と 鼻の穴穴と
真一文字の口と チョンマゲ
どちらが主人公であろうか
と私は唱えていた
私の刀がビニール製でないよう
一応、指で確認したくなる
今 Made in China は困る
村雨と呼ぼう
これは 名刀村雨 です
あ、雨。
雨だ、雨だ、雨だよ、
大雨だよ、
警報さ、 注意報を飛び越えてやってきたよ
日没でもある、
退散せねばなるまい
致し方の無いことで候。
私は名刀を鞘へ やむなく納めた
少し、勢いをつけて
チャンと音立てたのに
鞘を持つ左人指しゆびを
したたかに切った
指を口にくわえた侍が
駆け出してゆく
ただ願うばかりだ
ただただ願うばかりだ
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