*ひたひたと満ちてゆく*/かおる
 
来た宣言で驚いたのは鼻ばかり



          冬枯れた大地にどっしりと立っていた
          セピア色の時の狭間に
          蛹のように冬眠中だった樹々も
          茶色の鎧を脱ぎ捨てて
          ほんのり薄紅色の薫り
          夜空を紗のカーテンで遮るよう
          すると街の灯りが人恋しさを呼び戻し
          海のはらからを一粒、ポロロン
          雨に混ざって春の呼び水になるのか



 薄ちゃけていた屋台骨に
 ひたひたひたと薄紅色の鼻緒
 葉脈を駆け上り
 みどり色の世界への
 ピンク色の蜃気楼のような
 架け橋になる日も直ぐそこに

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