独 ?/木立 悟
 




風が急に冷え
空を這うものの音が聞こえる
濡れた道が立ち上がり
差し出された手のなかの水には
夜と朝の境い目を
白く明るく消し去るものが微笑んでいる


神は神を降り
世界は世界を甘く噛みやる
空の大きな合図のように
割れた午後の光の下で
川の色はすべて変わり
今はまだ終わらない数分の永遠(とわ)を
中洲に立つものへと打ち寄せる


走り去った汽車の煙が
いつまでも小さな湖の上にある
終わり はじまるものたちが
しるしの赤をたなびかせるとき
そこに在るものも 無いものも
どこに居ることも赦されない
ありえない独(ひとつ)の声を聞く








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