とうちゃんのあたま/YASU
 

「とうちゃんのあたまこわれちゃったの?」
「どうして?」
「どうして?」

お前は小さなお骨になって帰ってきて
お前の息子は不思議そうです


「かあちゃん、とうちゃんのあたまどうしちゃったの?」
「箱にはいっちゃったの?」
「ちっちゃいねー」

お前は小さなお骨になって帰ってきて
お前のかみさんは息子の頭を力なくなでています


お前は小さなお骨になって帰ってきたというのに
窓の外は冬晴れの青です
なにも変わらぬ日常が流れています

そんな 
なにも変わらぬ日常の中
お前は息子を育て
お前は死んで逝った
4歳と1歳のお前の遺伝子を残して
お前は本当に逝ってしまった


息子はお前とそっくりな天真爛漫さで
母の袖を引っ張っています

「かあちゃん、とうちゃんのあたまこわれちゃったの?」
「ちっちゃいねー」


お前とそっくりな幼顔して
幼いなりに精一杯
戸惑っています

息子はおかしいくらいに
お前にそっくりな顔して
戸惑っています



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