舟が見える風景/佐々宝砂
 
頭上でせわしく機械音が響いている
腐った畳を敷いた地面はひどく歩きにくい
どうしてだか私は暗い茶畑を徘徊しているのだ

踏みこんだ裸足がずぼりと畳にめりこむ
視界いっぱいに夜空 雲間を滑る葦舟
安定を失って私は倒れおちてゆく



                     (未刊詩集「異形小曲集」より)
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