塀一枚/海月
隣の家の老婆の大切にしている
猫が朝方亡くなりました
老婆はずっと泣いています
別に僕には関係ないと
階段を響かせ学校に出かける
電車を待つホームで朝の出来事を考える
お婆さんは大切なものを失ったんだ
今頃になってその意味に深く気づいた
学校から帰ったら一言言おう
通学路にしている道のゴミ捨て場
腕の折れた人形を見るたびに
何も言えなかった
僕がいた
身近に死を感じているけど
塀一枚の手前で起きたことは
僕の考えていたことより重かったんだ
猫の後を追うように亡くなった
老婆は自殺なようです
学校帰りに近所の人の会話を聴いて
朝何も言えなかったことを
後悔する僕がいる
塀一枚の境界線
少し僕を助けてくれた気がした
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