ほどけおちる記憶/もろ
 



臙脂色の絨毯がほつれていく
どうして、
私の手は
その糸の端を
ゆっくりと
ほどけるとわかっていて
ひっぱっている

手に残る
つつ
という感触が
ほどいていく手を止めることなく
大きく連なった
一枚の絨毯を
形のないものへと
変えようとする
失くしていく手ごたえ

アノヒトの記憶を
ほどいていく感触
手を離していく
電気信号

形を失くしても
繋がったままでいる
ほどけおちて
絡まる


それなのに
すべてがほどけてしまったその後で
見えなくなったアノヒトは
形を取り戻しただろう
私の手は
絨毯を
織り始めている


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