長い坂/アマル・シャタカ
 
泣いている子供がいた
親にはぐれたのだろうと
慰めてみたが泣き止まず 途方に暮れる
いっしょに歩いていた犬が
子供の顔をぺろりと舐めた
子供が笑った
僕も苦笑い
親御さんが現れて
僕たちは別れた

転落しそうな女性を
男性が必死で手を伸ばし助けようとしていた
女性は言った
手を離して あなたも落ちてしまうからと
彼は何も答えなかった
僕は急いで駆けつけて男性のお手伝い
しかしここは坂が急で苦戦
相棒の犬くんが吼えると
聞きつけた周りの人が助けてくれる
女性は男性の胸の中
みんな
いいもの見たなあと笑顔で話した
僕もちょっぴり憧れた

老人が座り込んでいるのに会った
何をしているの?登らないの?と聞くと
もう年でな 足腰もたたんのよ
と優しく言う
でもまだ途中だよ
と僕が言うと
ここがワシの終点じゃさ
景色もよいし 風も心地よい
と上を向きながら微笑むので

相棒の犬くんといっしょに
老人の横に座って上を見上げた

空が綺麗だった

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