落下/たもつ
 


裏庭から
雨音に紛れて
犬が落下していく
音が聞こえる
どこまで落ちていくのか
犬にも僕にもわからないまま
犬は落下し続け
僕は音を聞き続けている
少し傲慢に生きてきて
思い出は美しい
だから今でも僕は
思い出以外のものに
優しくなれない
やがて音が止まると
今度は僕の落下が始まる
きちんとお座りをして
僕の落下する音を聞いている犬に
雨のあたっている
音が聞こえる



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