MAGICAL MYSTERY TOUR/まほし
 
号車】

汽車の上の愚か者は
大きく開いた心の眼で
レールの先を見ようとする

旅のカラクリを
伝えようとすればするほど
愚か者は人の輪から外れて
声は体の内へ向けられる

煙が迫り来ると
眼から辛い涙がこぼれ
声は小骨となって喉を刺す

・・・このまま
汽車から飛び下りたら
ほんとうの愚か者に
なってしまうのだろうか



【5号車】

誰もいない

汽車のネジの雨が
降るのを見て

乗客はみんな逃げたけど

どの車両に行っても
危ないに違いない



【車掌室】

「こんにちは」と
「さようなら」するために
旅しているのだろうか

目まぐるしく過ぎ去る風景に
車掌は想う

やがて
自分の頭の上にも
ネジの雨が降るだろう

それでも

「さようなら」の果てに
帰るところがあるから

旅しているのかもしれない




戻る   Point(15)