くそみそ/虹村 凌
ガラリ
と店の戸が開く。主人は何かを作っていた顔を上げ、愛想の良い笑顔を浮かべる。
「らっしゃい!」
見たことの無い客だが、やはり客が来てくれるのは嬉しい。
「お客さん、何にします?」
客はしばらく御品書きを眺めていたが、やがて顔をあげると、
「特制味噌汁」を指差しながら、こう言った。
「鯖の味噌煮と、この特製味噌汁、それとご飯は男盛りで」
「あいよ!」
主人は勢い良く返事すると、早速準備に取り掛かった。
色々と調理をする一方で、主人は特製味噌汁の話を始めた。
「お客さん、これはウチの店だけの、特製味噌を使っててね、
そら他の店じゃ出せないような味の味噌汁なんですよ。」
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