仄かな言葉/白石昇
 
 裾の長い制服に足を通そうとした瞬間、わたしは鈍痛と共に内股を伝い降りてゆく生暖かい感触を認識した。わたしは最初、下腹部に感じたその鈍い痛みをただの食あたりか何かから来るものだと思った。
 わたしは内股を触ってみた。でも、手に感じた軽いぬめりを持った暖かい液体は、明らかに直腸からもたらされたものではなかった。
 わたしは知らなかった。なにも知らなかった。なにが起こったのか、わけがわからなかった。わたしは大きな声を出しておかあさんを呼んだはずだった。だが、わたしのその声は全くわたしには聴こえなかった。


 おかあさんは、十五歳になるまでその、わたしの身に起こってしまった身体の変化について
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