一月のバラッド/狸亭
 

無罪放免まであと二十六ヶ月かと指を折って
なにやらしれぬなまぬるい監獄暮しの
ご同様のひとびとにまぎれこんで日がすぎて
それでも親子六人がいわうお正月の初物
にぎやかに酒をのんだり餅をくったりの
三が日がすぎるとひとりまたひとりと
それぞれの背中をのこしてきえてゆく冬野
さむい風がはしりぬけるアスファルト

あとはいつもの時間がつまらなくながれて
世間の出来事もなぜだかみんないい気なもの
生きていることに真面目になれなくて
これではいけないと青春十八切符鈍行列車の
ひとり旅前橋駅に降り立つとそこは赤城の裾野
モダンによそおった広瀬川のゆたかな水の音
名物のからっ風
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