冬の喪失/たりぽん(大理 奔)
 
奪われていくだけで
体の細い先っぽから熱
低い空に流れていく
雲に穿たれた青空

なくなってから知るのだと
ひとは言うけれど
得てすらいないのだ
失う事すらできないのだ

  小舟が防波堤を去っていく
  灰緑色の波にもだえながら
  それは僕のようであるけれど
  まったく僕の窓の外

失っても いないなら
哀しいこと もない
鼓動のように何度も
言い聞かせても

そう言い聞かせても



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