冬知らず/便乗鴎
街は冬でも清潔で
指はすべすべしている
ウィンドウに息を吹きかけて
さようなら
またあいましょう と描いている
寒さは気分をはきはきさせる
上品で気品高く
洗われたシーツのような冬空
灰色の雲も気にならない
鼻先しか見ない生き方を
さんざん新聞に教えこまれたから
聖バレンタインが北風のように
ふらりとバスステーション前のミスタードーナツに現れ
カウンターに
か
な
し
み
の文字を並べ替え時間を潰している
かみ なし に成らないように
頼んだ珈琲に口をつけることもせず
足早に出て行く
ついに涙も拭かないまま
そして渡せなかったラヴレター
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