冬知らず/便乗鴎
 
街は冬でも清潔で
指はすべすべしている
ウィンドウに息を吹きかけて
さようなら
またあいましょう と描いている
寒さは気分をはきはきさせる
上品で気品高く
洗われたシーツのような冬空
灰色の雲も気にならない
鼻先しか見ない生き方を
さんざん新聞に教えこまれたから


聖バレンタインが北風のように
ふらりとバスステーション前のミスタードーナツに現れ
カウンターに




の文字を並べ替え時間を潰している
 かみ なし に成らないように
頼んだ珈琲に口をつけることもせず
足早に出て行く
ついに涙も拭かないまま
そして渡せなかったラヴレター
[次のページ]
戻る   Point(3)