ストローク/霜天
 

東京へ侵入してから少しずつ
声が綺麗になっている
気がする
結局、順応しているのかもしれない
直線と直角、縁取りされた空に
月は白かった
そこだけは何も変わらない
少し高くなった声でつぶやいた


しなくてもいい約束でこの街は一日ごとに高くなる
君を苛めてしまった昨日までにも、どこかに意味があるはずで
今は、わからない
それでいいんだと思える
往復される腕と腕
泳ぐように
またそこに戻っていく
東京、霧に浮かんで
いつだって気付かないまま、美しかった




繰り返して
「見えなかったけれど、線は繋げているんだ」
と、零し続けている
指先と指先とが出会うまでの
その自然な速度
少し寒くなった電車に揺られて
また、いつもに戻っていく
ただいま、と繰り返して
そこでも僕らは僕らです
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