本気だった/クリ
 

 さよならで固まる

 夜が明ける 人が行く

 陽が差す 酸性雨に降りしきられる

 あの小さな子がこんなに大きくなる

 区画整理が始まる

 建て替え決議がなされる

 落葉が降り積もる

 未曾有の豪雪に関節がきしむ

 すべてが行き交う

 一人だけ残る 引き続き固まり続ける


 行った覚えのない春がまた来る

 黄昏る 曙る

 波は寄せる 波は返す

 伏せた睫毛の残像を見るともなく見る

 まだまだどうして固まったままでいる

 桜前線に追い抜かれる

 鳥に巣を作られる

 烏に狙われる キタキツネに登られる

 似た人がしばしとどまる

 雛が巣立っていく しんとする



  涙がやっとこさ出る



                       Kuri, Kipple : 2002.07.26

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