レイン リフレイン/木立 悟
 




斜めの道を歩きつづけて
直ぐの道に出たときの
めまいにも似た左の震え
つまびく果てのリフレイン


穴だらけのひろい通りを
下を見ずに駆けてゆくとき
街を横切るもうひとつの街
彼方ひろうリフレイン


自らの尾を咬むように
旋りつづける幾つもの空
巨きな音ほど聞こえなくなる
水のよに昇るリフレイン


空色の絵 何度も塗りかえ
涙色の花 背にあふれ出て
鈍色の波 凍野のうたごえ
レイン レインくりかえす


湿った屋根から遠去かり
いつのまにかかわいた耳たぶ
雪喰む鴉のまなざし震わせ
空つたう 空つたうリフレイン


音は音のまま火を昇り
裸眼のなかで曇に変わる
高みの声とひとつになり
空をしずくにしずくになぞる


腕の羽 小さな肩の羽
飛ぶことのない胸の羽
見えぬしずくをかかえては
空へ空へと放ちつづける


いつかかがやく手のひらの羽
とめどないむなしさとしあわせの羽
重力と引力のはばたきの笑み
レイン リフレイン くりかえす










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