虫も殺さぬ/佐々宝砂
した、真冬なのに蝶がとんでて嬉しいです、とかいうような記事だった。私はそれを読んで「おめーあほか」と思った。この不運な蝶は、室内があったかいから間違って羽化してしまっただけで、まともに食べ物を探すこともできず、連れ合いを探すこともできず、かといって春まで生き延びることもおそらくはできず、孤独に死ぬほかない。虫の飼育というのは、結局そういう不自然を虫に強いることなのではないかと考え、私は虫の飼育すらあきらめた。
だが私は今も虫を殺す。たとえば刺す虫は殺す。痒いのも痛いのもいやだし、病気がうつるかもしれないのはやっぱりいやだからだ。蠅やゴキブリも殺す。家庭内に住む蠅やゴキブリは病原菌を媒介するか
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