rusty/KADY
老人が
道端の雑草に視線を捕らわれている
生後
間もない赤ん坊が
渋滞の排気ガスの中でひとつ咳をする
母親はサングラス越しに
赤ん坊に微笑みかける
タクシーが渋滞の列に割り込み
後ろの車がクラクションを鳴らす
信号は赤
歩行者が車を避けながら
向いの歩道へと急ぐ
携帯電話を見つめる者同士がぶつかり
会話も無くまた離れてゆく
彼女達は出逢いがないと嘆いている
隣人の顔さえ知らず
おれはポケットの硝子の瓶の蓋を開ける
スクランブル交差点の真ん中で
おれは硝子の瓶の中のモノを口に流し込み
噛み砕き
噛み砕き
唾液と共に飲み込む
空に放り投げた缶珈琲の中身が
この街の明日に散らばる
激しい痛みが火曜日の朝を支配する
おれは
この街の
錆びついた心臓を
貫いた
[2006年01月24日(火)]
戻る 編 削 Point(1)