早春歌/恋月 ぴの
 
叙情の彼方を探るように この岸辺にて
翼を休めるものよ 優しげな日差しと
聞こえ来る 春の訪れを告げる歌声
地に生けしもの総て 目覚めの刹那を夢想する


巡る季節の旋律は いつにもまして気紛れで
待ち遠しさに 唇は震え
募る恋しさに 胸は高鳴り 
思いの丈と戯れる その歌声よ


弦を押さえる指先で 羽を繕うものよ
束の間の歓びと知りつつも
水面にゆらぐ日差しに誘われ 弓を滑らせては


そよぐ風と 羽ばたく翼の 饗宴に
その歌声は 春の兆し
確かに聞こえ来ると頷く幕間に 花一輪
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