及川なお/虹村 凌
 
教会の中の懺悔室で一人
夜を明かしたいと思っている
髭が茫々に伸びたオジイサン
右手には小銭を集めるカップ
左手には小さなダンボールに
「片足が無くて仕事にも付けずホームレスをしている」
「助けてくれ」
一日中声を張り上げた喉はガラガラで
それでも癒してくれる水は飲めない

リズミカルに椅子を叩き
カップを振って
16ビートを刻む
張り上げる声
ホームレス達の戦争
領土拡大か縮小か
「お前の心は何処にあるんだ?」
「頼むぜ兄弟、少しで良いんだ」
ハッパの匂いのする口臭
一本25セントの煙草で大喜び
でも腹いっぱいの飯なんてもう食えないんだろう

ビルゲイ
[次のページ]
戻る   Point(2)