そして石橋さんは/むらさき
そして石橋さんは
いつまででも女だった
組んだ足から少し見えちゃった
レースのシミーズは
夕方飲まれるべき紅茶の色をしていて
まるで時間なんて関係ないわ
というばかりに
いつまでたっても変色しないだけの気迫を
解き放ってたことに
あたしは
どきどきして
宙をたまたま舞っていた
純粋そうな綿毛に
目をやったのでした
彼女がまだ
フランス語の辞書を片手にして
ボーヴォワールの静かなため息に
聞き耳をたてていたころ
あたしは
大人の女の人の子宮に
くの字に収まって
最初の酸素を一口吸った後に
言わなきゃなんない感想のことなんかを
考えていた
だから
石橋さんとあたしは
今まで同じ男の子を好きになったことは
ないけれども
あたしは石橋さんと同じシミーズを持っていて
まだエッチをしたことがない黒い子猫は
そんなあたしたちを見て
鼻先でわらった
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