少しずつ落ちていく/霜天
 
夜は夜のままで、かたち通りに息づいていく
少しだけ回る酔いの、世界の
窓枠から月明かりが零れる
思うままに影の、区切られて
深くなっていく宵の
眠れないと、嘘をついた

流れはそこから、速くなっていく


霧に僕らは吸い込むように
まぶたの裏に押し付けるように
紙に残す言葉は滑らかに変換させて
また、僕らに消えていける日が来る
騒ぐことも
流すことも
零すことも
遠ざかる、ことも
誰も、忘れていきたい物音を
靴の裏に、刻むようにして

夜も、少しずつ落ちていく




いなくなる、朝に
珈琲を飲んだ
おはようとやさしく嘘をついた
いつも通りの電車の警笛が
その、朝に響く
日常、と呼べるはずの朝が少しずつ欠けていく
いなくなる全てに、少しずつ落ちて
いく


靴の裏に刻む憶えていくための声と声
欠ける朝のまぶしいところ
届く、ための
戻る   Point(7)