月光/シギ
汚れてしまったプールの水
まだ空は晴れぬまま
夏が零れるのはまだ先
桜もまだ咲いていないのに
あなたなら気が早いと
笑うのだろうか
あなたを失う夢を見るたび
私は自分を捨て置いてでも
追いかけたくなるの
あなたが好きだと言った
あのメーカーの珈琲
美味しいと笑ったのは嘘
私の味覚はまだこどもで
本当はまだその美味しさも
理解出来てはいない
時間以外の何を
共有出来て居た
と言うのだろう
あの日に奏でていた歌も
叫んでいた声も
もう今となっては
ただの過去という名の
時間でしかない
汚れてしまったプール
ほんの少し
ほつれてしまった制服
あの日にもらったボタン
あの日に撮った写真
忘れてしまいそうな程
眩いあの日々
暗闇を照らす月が欲しいと
怖いと泣いた私に
マグカップのの中の
珈琲に月を浮かべて
手に入れたよと笑う
あなたは
もう
過去でしかない
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