瀬/木立 悟
 




水たまりから鳥が去っても
底の底に鳥は残る
生きものの口が触れた水
濃に淡に無のように
まるい骨をめぐる砂


炎は鎖
朽ちた舟の碑
子供のかたちに飛ぶ鬼火
焼けた葉の道
影は動かない
氷によせる池の水
かえす紋のはざまの死


十二月の鉛の上に雨が降る
信ずるものの飾りと化粧が流れゆく
川岸の濡れた砂の山から
強い草のにおいがひろがる
霧の木が降り
地に不確かな輪をつくる


崖の上の溶けた村
何かが歩き 遠去かる影
夕暮れのない一日の終わり
野を分ける道にたちこめる
淡く重い敗者の緑









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