川を渡る人々の地/木立 悟
王が死に
幼いその口に入れられるのは
黒白鳥の羽ばかり
色と光が人々をおびえさせ
細い指に触れる者さえいない
遠まきに見つめ 目と目をかわすだけ
川の音がしだいにあたりに満ちていく
水をはじく音
数えきれない舟唄の死
そそり立つ岸壁にはね返り
城の空気に冷たい手を添える
散らばる武器と武器をつなぐのは血
翳りの針が大使のようにおごそかに
王に別れのくちづけをする
誰もいない広間から
空の赤はなかなか去らず
すべり いつしか染みついて
くずれた壁のかけらと共に
静かな王の眠りを守る
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