黄金の林檎/ZUZU
 
いつもすこしだけ
手の届かないところに
私の欲しいものはあった

泥の中から手を伸ばした
割れたピンボールマシーンの中から
砕けた肩を掌で支えながら
雨の流れ込むマンホールの隙間から
チェーンソウでえぐられた木の根っこからから
私は手を伸ばした
必死で手を伸ばした

伸ばした手の先に
黄金の林檎はいつも輝いていた

黄金の林檎は
焼け付く太陽に照り返し
私の目は盲いた
優しさは時限爆弾のようなもの
哀れみは有刺鉄線のようなもの
私の築き上げた塔は爆破され
私の織り上げたカーテンは引き裂かれた

それでも私は手を伸ばした
もうすこしだったから
あとすこしだったから
私にキスしてくれた人がどんな罪を背負っていたとしても

私はかすかな光を見た
黄金の林檎は手からこぼれ落ち
遥かな平原へあられのように降り注いでいった
欲しいものにはいつも
この世ではほんのすこしだけ
手が届かなかった

こころにたべものをおあげ
まようことはない
ほらきみの行きたかった世界だよ
きみの住みたかったおうちだよ





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