自転車泥棒/
KazMi
倒し
やっと走るのをやめた
怪我してまた泣いてやしないかと思ったら
彼女
砂浜に背けになって笑っていたよ
息絶え絶えに 笑っていたよ
俺はチェーンが切れてしまって
とうとうもう走れないようだが
これが俺の終わりなら
悪くないと思った
潮風に吹かれてゆっくり
錆付いていこう
いつか風化して
俺が本当に風になった時
彼女がまた泣いていたなら
俺はその小さな涙を攫いに行ってやろう
一陣の風になって
戻る
編
削
Point
(5)