自転車泥棒/KazMi
 
倒し 
やっと走るのをやめた

怪我してまた泣いてやしないかと思ったら
彼女 
砂浜に背けになって笑っていたよ
息絶え絶えに 笑っていたよ

俺はチェーンが切れてしまって
とうとうもう走れないようだが
これが俺の終わりなら
悪くないと思った

潮風に吹かれてゆっくり
錆付いていこう

いつか風化して
俺が本当に風になった時

彼女がまた泣いていたなら
俺はその小さな涙を攫いに行ってやろう

一陣の風になって


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