髪を切る日/
ベンジャミン
ば
恐ろしくてしかたがなかったことを
覚えています
ただ歳月というものは
黙っていても流れてゆくもので
あれからとうに桜も散って
つつじも散って
冬のさなかになりました
髪をかきあげてみれば
指のすき間からこぼれるその
重さがわかるほどに
流れた時の多さを知らせています
髪を切ろうと決めたのは
特に心境の変化があったからではないけれど
短くすればその分だけ
少し身軽になれはしないかと
今
鏡の中に問いかけています
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