美しい嫉妬。/杉田蝶子
 
暗い空が
黒い海に埋もれてゆく
私は
一人砂浜で
掴んだ砂を握りつぶす
隙間のない
二つに
嫉妬して
世界を破りたいの
どうか今すぐ
闇の深く深くへ
より恐ろしい魔物を求めて
お願い
世界を壊して下さい
透明のやわらかな
涙を捧げて言う
魔物は
美しいものは嫌いだと
怒って私を苦しめた
私をもっとも苦しめた
愛するあの人のもとへ
放り投げたのだった
愛する人が
知らぬ人の傍で笑う
のを見ている
という
悲劇
あの子がただ憎くて
愛もないのに憎くて
疎ましくて要らなくて
涙は穢れて ゆく
そうして魔物は
涙でただれた私を
よろこんで
食べた。
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