手のひらの大きさ/ベンジャミン
生まれたときから
親指が無かったのだと
その子はいつも
両手をポケットに入れて
両手を使わなければならないから
雨が降る日は嫌いだと
右利きなのに
五本そろった左手で書く文字は
皆よりもかっこ悪くて
それをいじめる子もいました
もしかしたら
僕もそういう目で
見ていたのかもしれません
泣いた顔を隠すとき
足りない指の隙間から
見えてしまう涙の筋が
細く線を引いていました
幸せは
手のひらを転がって
悲しみは
手のひらから溢れてゆきます
すぐに転校してしまった
その子は今
幸せでしょうか
あの頃の僕は幼く
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)