夏の奥、油性の足跡/霜天
あの人へ
何が、残せますか
つぶやいた言葉には、行方がありますか
いつも夏には
揺らめいて、薄れていくものが
近くにも、遠くにも
留めて
確かにそこに居たはずの
陽炎の、音
確かめるために手を伸ばして
掴めるはずだったものは
空
長い坂道を何度も駆け上がっては
あなたに言うための言葉を何度も作り直した
道の側、土と草の分かれるところ
確かに残った足跡の先で
いつだってあなたに逢える気がした
曲がりくねった空、四角く区切られた雲
そこから昇っていけば、いつも滑り落ちていく
届けるために声を、大きな円にして投げてみれば
街は、それ
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