夏の奥、油性の足跡/霜天
 
あの人へ
何が、残せますか
つぶやいた言葉には、行方がありますか




いつも夏には
揺らめいて、薄れていくものが
近くにも、遠くにも
留めて
確かにそこに居たはずの
陽炎の、音


確かめるために手を伸ばして
掴めるはずだったものは



長い坂道を何度も駆け上がっては
あなたに言うための言葉を何度も作り直した
道の側、土と草の分かれるところ
確かに残った足跡の先で
いつだってあなたに逢える気がした
曲がりくねった空、四角く区切られた雲
そこから昇っていけば、いつも滑り落ちていく
届けるために声を、大きな円にして投げてみれば
街は、それ
[次のページ]
戻る   Point(11)