沈む地の精霊/木立 悟
 



子供の小指のための鉄の輪
寄せる水のかたちに錆びた床
油が静かに水を覆う
床の亀裂がかがやいている
小さな何かと澱みの土くれ
光の種を吐き出しつづける


石の間をまわる送り火
川を流れるひとかたまりの雪
常緑の呪いと見えない目には
どこまでもやわらかなものばかり


崩れ折れた橋の向こう
渡ることのできない灰の地に祭はある
小さな何かが次々と水に落ち
音は重なり 破れ ふいにひろがり
音だけが生きつづけ
灰と火の上をめぐる


枯れ木の壁に見えかくれするもの
長く銀色に歌うもの
晴れた夜を映した水から
ただひとつの水紋とともに現れるもの
しずくのように降りそそぎ
降りそそぐように歌うもの









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