多目的マスターベイション/カンチェルスキス
 





  おれは驚いたが
  どうすることもできなかった。
  画面が切り替わり
  イラン大地震のニュース。
  黒いほうっかむりの老婆が
  瓦礫の上で
  泣きながら
  息子の名前を叫んでいた。
  おれはお気に入りの女子アナで
  射精しようとして
  自分のモノをしごいていた。
  女子アナが着てるのは
  胸の形がはっきりわかるニット地だった。
  一週間に何度もないことだ。
  目をつぶり想像した。
  目を開けると
  老婆が叫んでいたのだ。
  絶頂を迎えていた。
  おれも老婆も。
  目を逸らしちゃいけない
  これが現実だと自分に言い聞かせた。
  そのままイッた。





  その後でおれは
  ビールを飲んでいる
  この世におれ以外の人間がいることなんて
  忘れて。






戻る   Point(3)