ある風景/葵 悠貴
 
本屋を通り過ぎて、またあの骨董品店の前に辿り着いていた。
雨も降っていたことだし、本当は本屋に入りたかったが
お休みらしくひっそりとしていて、入り口らしき扉は締まっていた。

私を通り過ぎて歩いていく人が、どんどん増えていく。
ふとその歩く人の先に視線を移すと、
骨董品店はいつの間にか人だかりが出来るほど賑わいをみせていて
まさに物が売られていくオークションの真っ最中だった。
そのまま裏手に回ると、見たこともないような造りのピアノや
グランドピアノが所狭しと置かれていた。
何故かピアノばかりが目に付いた。

オークションを横目に、路地を奥へ入ると途端に道幅が狭くなっていて
その路地の突き当たりは厨房の倉庫のようなところだった。
数人の倉庫番のような人たちが、怪訝な眼をしてこちらを見ていたり
忙しそうに出入りして動き回っている。
私はそこで傘を閉じ、雨の雫を落とした。



                    二〇〇五年十一月十九日
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