喝采のクレオパトラ/カンチェルスキス
いつものようにマンションの郵便ポストが冷たく死んでいる
買えやしない分譲マンションのチラシ、呼びもしないデリヘルのチラシ、
性欲ってビジネスになるんだなって納得するほどのピンクチラシ、に
まぎれてピザ屋のチラシにほっとしたりして、でも注文するほどの金はない、
刑務所の階段を上るみたいにして階段を上り、
叩いても無機質な金属の音しか聞こえてこない、そりゃそうだろう、
体温のある鉄なんていまだ開発されてないんだ、
見慣れた鍵で、それがそうでなくてもとにかく、鍵穴に差し込んだら、
カチッとドアが開いて、少なくともおれが世慣れた盗人じゃないってことだけ
確
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