うみべの隠れ家/たりぽん(大理 奔)
僕らの住処は小さな漁具小屋
呼びあう吐息を波の声に隠し
漁網に髪を絡ませながら
夜の深まりを体温で追った
雪夜の渇いた闇をとかした雲が
入り江を真冬のガッシュに染める
朝の刃を隠した列なる波の端で
見つめる心を切り刻む
シベリア訛(なま)りの北風
海藻の免罪符を投げ捨てて
このまま小舟を漕ぎ出せば
無限に限りなく近い永遠で
海に塗り込められる
浜辺の皎白(こうはく)にひとすじ
人に馴れた獣の足跡
僕らの
飼い馴らされた野生の足跡
温もりの匂いを嗅いでいる間
生きるという事が愛しくなる
獣の住処、小さな漁具小屋
流木の薪が尽きて凍えても
僕らという命をくべるほどには
潮はまだ満ちていない
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