老いた犬/本村K
老いた犬が一匹
薄手の夜を徘徊
虚ろな地面にこぼした瞳
あまりに強すぎる鉄風で
ちぎれた黒の隙間を探す
ただ鉛色の溜息を力なく嘔吐しては
生きる場所さえ探し歩く
運命が存在するならば
私が悩む必要はないし
宿命があるならば
すぐに断ち切ってしまえばいい
残酷だな 何も知らないって
夢で二回死んだ
老いた犬はうなだれて
魚の眼で見た
そこに死ぬ日が横たわっている
切れた息を循環させ
犬はくわえて走って逃げた
出来る限り遠く 遠く
ずっと遠くの未来に逃げた
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