いたみ/なるせ
 
自分自身に従順になって
前を見ることを拒む
落ちた目蓋にかかる生ぬるい風も
あの日と同じではないと知っていた
いつからだろうか
夢を見なくなったのは

きみのぜんぶを愛したはずだ
ただ
呆れるくらいに繰り返した
おおくの愛の言葉が色あせて
元の色を失っただけ






−知っていただろ、その手は何も取り戻すことは出来ないって。



    −知っていたさ。だから、もう何も手にしないんだ。






気づいていた
過ぎた時間は戻らないことに
けれど忘れていた
いつだって帰れると思っていた
あの頃に

犠牲になるものはいつだって美しかった
思い出の中でいつも優しく微笑むんだ
なくしてから気づく愚かさを
人は結局
捨て去ることが出来ないまま


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