鳥の子/木立 悟
いつもそこを訪れ
あらゆるなぐさめを得るのだった
季節はずれの砂塵が
森のすそを薄く埋めた
こんな日は風が何より強く
血のにおいを運んでくる
少女は憶えている
墓標のように続く
砂から突き出た兵士の手の列を
少女はまた憶えている
砂漠で幼い王の亡骸を抱き上げたとき
その口からこぼれ落ちた砂の色を
皮の袋に木の実を入れ
捕らえたうさぎにとどめをさすと
森はひとつのようにゆらめき
途切れ途切れの血の香がからみ飛んだ
川で口をゆすぐ少女の頬を
砂まじりの水がぴしゃりと打った
きょうも家にもどるため
死体に咲いた花をかきわけて
少女はいつしか泣くことをやめ
語りかけるように歌っているのだった
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