鳥の子/木立 悟
花を探しているのに
目に映るのは死体ばかり
戦乱はこうして
新たな緑の苗床となるが
少女はいつも
涙をこらえることができないのだった
ひと続きの岩は
やわらかな苔に覆われていて
家にもどるときのかっこうの目印だった
少女は木の扉をくぐった
一本のさじが落ちて
一本のナイフに当たった
その音にひとつの食器が震えた
少女は目を閉じたまま聴いていた
長い間
ひとりで生きてきたのだ
行方知れずの川を下ると
中洲に根をはる梨の木があった
枝は根元から上へ向かい
葉は中洲を覆い
まるで川に浮かんだ
巨大な緑の髪飾りのようだった
少女はいつ
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