忘却の黒/麒麟
 
ふれられない

それは届かない

でも僕らは知っている

その悲しさを

包み込んだと思うとなくて

忘れた頃に背後に現れ

酷い事をした時は容赦なく

眠れぬ夜に渦巻いて



恋人達は知っている
それが悲しみを越えてきた事を
一度きりの劇場である事を
遠くの灯台は煌々と輝き
頭上の街灯はぼんやりと光る



気付いていないのだ



どんなに光満ち溢れる場所に立っても

その足元には

人の形をしたそれが横たわっている

おそらく、背後に潜んで
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