くびすじ/和歌こゆみ
 
初めて彼に触れられた日を
昨日のように憶えていた
つないだ手の感触を
彼女はいまも思い出せる

ふたりで建てたちいさな家
一緒に住みたいとも
結婚しようとも
どちらも言葉にはしなかったけれど
そうするのがあたりまえで
そうしないのは不自然だった
それだけのこと

「ただいま」のあと
上着を脱ぐ彼のうしろ姿
その首筋が 自分のそれと似てきたことに
気づいて彼女は笑みをもらした
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