午後の子 ?/木立 悟
 
去ることができずに
けものは怒りをただ抱きしめる
見えないものを慈しむように
無数の鳥が飛びまわり
見えないはずのかたちをひらく
独り歩む子の瞳から
火と傷と血が現われたとき
けものは夜の涙を流す
左目に閉じこめていた翼を放つ


夜の光の街で
影が影を追い抜いてゆく
載せるもののない貨車が
操車場へと遠去かる
鉄の余韻が冷めるころ
問うように見つめるけものに向けて
枕木に立つ子は「みんな」と詩い
空に立つ子は「すべて」と詩う









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