午後の子 ?/木立 悟
 



怒りの向こうに
無人の野がひろがる
地の上を
たくさんの月がさまよう
引力の主を求めて
風に散る光を問い詰める


求めず 求められず
けものは去ってゆく
己であればあるほど
悲しみは増してゆく
独りでいることは終わりなく
独りを知る心さえ消えてゆく
けものは海のちかくに立ち
消えかけた手が燃え上がるのを見る


地の月から来る川が銀を運ぶ
ちぎれた空の緋が
流れの上に浮かぶ
銀にかがやく青いけものは
枯れ葉の音に振り返り
歩きつづける子の背を見る
水たまりの氷を次々と踏み抜く
細い足首と夏の靴を見る


未だ消し去る
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