午後の子 ?/木立 悟
 



草に埋もれてゆく家
土に埋もれてゆく川
骨組みだけの建物の上から
架空の町を見つめた
道をゆく風
動かない風
他よりほんの少し高い場所から
子は無人の町を見つめた


土のにおいに混じるもの
流れつく涼やかで悲しげなもの
かがやきつづける欠片の海
本当のことを求め疲れた足跡に
打ち寄せる


時を拾い歩くものの心さえ
時の手の内に拾われている
砂を巡る子供の軌跡が
波に改められることなく
陸のかたちを描いてゆく


左目から落ちる小さな水に
鳥も笑みもよみがえる
高い場所から降りてはじめて
人影の少ない道を踏みしめ
時に埋もれかけた子の手のひらは
長く静かに歩きつづける
ひとりきりの子の手に触れる








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