行商/あおば
 
春に見込み生産した思想が腐って
生臭い匂いを残して冷凍された
夏の記憶を持たぬ子供の眼が
暗い海を見つめる

冬の陽のあどけなさ
日溜りに春をもたらし
猫の子はしゃぐ

初春や羽根つく子等に
注ぐ顔

オホーツクの海から
氷塊押し寄せて
狭い港は
白い荒野となった
水を求めてさまよう
三人の旅人
うずくまり火を起こす
その青い影

ここでは匂いまでも凍りつく
テントの外は吹雪いて
(白い風が一晩中吹き荒れて)
荒野を美しく飾る
その白い影

この北の港町まで
行商してきた旅人は
流行遅れの品を
特価品に混入して
眼を欺くのだ
光の乏し
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